PROJECT
STORY
2023年12月に発売されたバイオミックストーン。
自然由来の原料を主成分とする東リのLCT(Luxury Calcium carbonate Tile)シリーズの新たなラインアップです。
主な原料は卵の殻。卵の殻を床材にしたプロジェクトで躍動した4人のストーリーです。
商品企画部
M.Y 2016年入社
2019年に所属していた技術開発部 研究開発グループでバイオミックストーンのアイデアを立案。バイオミックストーンの発端者。
技術開発部
M.N 2020年入社
バイオミックストーンの前身「96%バイオマスタイル」の基礎研究を担当し完成させる。特許申請も担当。
商品企画部
A.M 2019年入社
バイオミックストーンの意匠を担当。卵の殻を使用した床材のストーリーが伝わるよう販促物にもこだわる。
厚木工場 技術課
T.K 2009年入社
試作品を量産化に導きバイオミックストーンの製品化を実現。床材初のバイオマスマークの取得も担当。
M.Y2019年春の話ですが、開発のきっかけは所属していた事業本部で行われていたアイデア会議でした。2016年のSDGs発効により、様々な業界でバイオマスマークの商品が誕生していたころです。まだ、プラスチック系床材にはバイオマスマーク取得の製品がなかったため、業界初の床材をつくろうと思いました。そして素材を考えるにあたり床材の主成分である炭酸カルシウムに着目。候補となったのが卵の殻や貝殻でした。卵の殻に決めたのは、素材の安定供給を考えたときに、食品工場などで日々消費されるため優れていると考えたからです。
A.M私は2019年入社なので、当時の話は後々聞きました。
M.Yそうですよね。スタートの時点で私は技術開発部所属で、発売までの間に商品企画部へ異動となり、後々商品企画部として関わることになりました。2019年春の会議が発端ですが、2020年の新型コロナウイルスにより世の中の需要が抗ウイルス製品へと移り、社内の開発の流れが変わりました。この流れの中、コツコツ開発を進めていたのが新入社員だったM.Nさんでした。
M.N私は2020年入社で技術開発部に配属になり、最初に渡された開発テーマのうちの1つがバイオマスに関するものでした。しかし、バイオマスに関する知見が社内に少なく、さらにコロナ禍ということもあり、先輩に相談できる機会も少なく、基本的にはひとりで開発を一歩一歩前に進めていました。当時は卵の殻だけでなく、カシューナッツや松脂など他のバイオマス素材も使いながら、バイオマス素材100%まで引き上げることを検討していました。そんな日々の中でラボ検証がうまくいき実機試作を行うことになったのですが、これが大変でした。失敗の連続で、機械の中が残骸だらけになり、部署の先輩や工場の方々総出で掃除をするなんてこともありました。そんな困難も乗り越え、他部署の方々にも助けていただきながら、2022年の国内最大級のインテリア国際見本市であるJAPAN TEXに参考出品することになりました。その時は「96%バイオマスタイル」と言っており、バイオミックストーンとは違うものでした。
A.MこのJAPAN TEXでの出品が、バイオミックストーンの大きな転機でしたね。来場者から非常によい評価をいただき、反響が大きかったと聞きました。
T.K私はまだプロジェクトに参加する前でしたが、社内で話題になっていたので96%バイオマスの話は聞いていました。東京で開催だったにも関わらず、地方の営業所から見に行った社員もいたそうです。そしてこの時はまだ、自分自身がプロジェクトに加わり、激動の日々を過ごすことになるとは思ってもいませんでした。
M.YJAPAN TEXでの評価の高さから、社内は早く製品化しようという雰囲気になっていました。バイオミックストーンの企画が始動してすぐに商品企画部に異動になった私はそのまま企画担当となり、何度か企画書のブラッシュアップを行いました。最終的には「96%バイオマスタイル」ではなく、卵の殻でつくる「バイオミックストーン」を2023年12月に発売することが決定しました。
A.Mバイオミックストーンはコンポジションタイルの分類に入るのですが、このプロジェクトの前に、コンポジションタイルのリブランディングプロジェクトが進んでおり、私はそのメンバーでした。その流れからバイオミックストーンの意匠を担当することになりました。
T.K担当することが決まったのは発売決定直後でした。M.Yさんが言っていたように「96%バイオマスタイル」ではなく、バイオマス素材として卵の殻を使用するため、進捗はゼロに近い状態でした。また参考出品のため、特許はとっていましたが実機試作はしていない状態。卵の殻の使用による不都合な部分の洗い出しから始めたため、発売予定に間に合うのかという不安はありましたが、この時点で多くの人が関わり製品化まで来ていたため、絶対に間に合わせるというモチベーションになっていました。試作では卵の殻特有の臭いなどを制御する必要があり苦労しましたが、何度も何度も試作を繰り返し製品化の兆しが見えてきました。ラインテストを何度も行ってくれた生産部門の方には心底感謝しています。
A.M意匠では、自然由来の素材だからこそできる、バラつきがあり不均一で自然の親しみやすさや穏やかな雰囲気を感じられる柄を目指していました。柄の表情は機械の調整次第で多様に変化します。それは少しの調整でも変わるため、T.Kさんには何度も試作してもらいました。
T.K実は技術畑の私から見ると、少しの調整で変わる差は言われたらそう見えるぐらいの差でした。ただ、A.Mさんの先輩とも仕事をしていたのですが、その方もこだわりが強かったので、東リのデザインに対するDNAが受け継がれていることに、頼もしさを感じていましたね。意匠も決まり無事発売へ、と思っていたのですが、バイオマスマークの取得が大変でした。細かい資料の提出が求められ、2023年の夏の思い出はバイオマスマークでした。そして床材で初めてのバイオマスマークを取得でき、無事発売予定に間に合いました。
M.Y発売予定に間に合ったことは、ただただすごいと思いましたね。本来、数年かけて行うことを半年ぐらいで完成させているわけですから。企画、基礎研究、技術、デザイン。それぞれの分野のプロフェッショナルが協力し、力が合わさった時の東リの底力みたいなものを感じました。
M.N私は諦めないで良かったと思いました。入社して右も左もわからないころから取り組んでいた開発テーマで、プレッシャーを感じることもありました。開発以外にも役員の方々にバイオマスの必要性をプレゼンするなど大変で、正直諦めそうになっていた時期もありました。でも発売を聞いた時は報われた気持ちがありましたね。
A.M今ではバイオマスと言えばM.Nさんという雰囲気がありますよね。私は普段のデザイン業務では柄をどうするかを考えるのですが、バイオミックストーンでは素材から新しくしてその素材を活かした柄をつくるというデザインが初めてだったので、お客様の反応が気になってドキドキしていましたね。
T.K発売時に思ったのは、やはり間に合ってよかったという思いですね。発売後にバイオミックストーンの採用が決まった商業施設で試験施工をさせていただいたのですが、うまく施工でき安心しました。そして商業施設が完成し貼られたバイオミックストーンを見て満足がいく仕事ができたと実感しました。あと、この施設は全館環境配慮型ショッピングセンターをうたっており、バイオマス製品の可能性も感じました。
M.Y愛知県のカフェスペースを併設しているパティスリーにも採用されていますよね。
A.Mバイオミックストーンは卵の殻を活かした柄のため、卵を使うようなパティスリーやカフェで採用されたら面白いなと思っていたので、採用を聞いた時はうれしかったですね。まだ実際に貼られているところを見ていないので、いつか見に行けたらと思っています。
M.Yバイオミックストーンの発売で終わるのではなく、しっかりブランドとして育てていきたいと思っています。こういった環境関連の製品については継続が大切。業界にない新しいものでお客様にとって価値ある製品を提供できるよう、商品企画部として取り組んでいきたいです。
M.Nバイオミックストーンで社長賞をいただきました。社長賞は半期に一度あり、顕著な功績やトピックとなるようなことを表彰する制度です。その時のスピーチで、次は海外で売れる製品をつくりますと宣言したので、有言実行したいと思っています。引き続きバイオマス関連にも取り組んでいるので同じように成果を出せればと思っています。
A.Mコンポジションタイルの製品改廃に現在取り組んでいます。コンポジションタイルはその歴史の中で、市場を席巻した時期があります。その盛り上がりを超えられるようにお客様の認知度をあげていきたいと思っています。その中で今回のバイオミックストーンのような新しい素材から良いデザインを生み出せたらと考えています。
T.Kバイオミックストーンが発売となり実感するのが、市場の環境訴求ができるような製品への注目度の高さです。これは想像以上の反応でした。そのため、バイオミックストーンのようなバイオマス関連の製品をひとつでも多くカタチにできればと考えています。意匠や性能面からより良い製品を世の中に提供できるよう、技術者として邁進していきます。
M.Y社長賞で表彰されたけど、このプロジェクトの打ち上げってなかったですよね。
M.Nそうです!一度、話は出ましたが予定が合わなくて結局まだできてないです。
T.Kでも、皆さん伊丹勤務ですけど、私は厚木勤務なので・・
A.Mじゃあ、T.Kさんが伊丹出張の時に開催しましょう!